【ChainAge独占】仮想通貨取引所、金融庁登録への道②|その日は突然、訪れた【匿名投稿】

※このコラムは匿名投稿です。

これは、筆者が仮想通貨の取引所ビジネスに参画したときから、2017年12月までの間に起こった出来事である。正式な交換業者自体、まだ16社しか登録がなされていない状況であることも鑑み、若干のフィクションを織り交ぜながら、しかし、取引所ビジネスのど真ん中で働いてきた人間としての心情は包み隠さず綴っていく。
2018年も末、「登録制」のはずが、ほぼ「許可制」となってしまっている交換業者、今後、仮想通貨業界がグローバルに盛り上がりを見せるか、そのまま衰退していくのかは今後の金融庁の対応次第だと考える。
一日でも早く、多くの交換業者が誕生し、活発に取引がなされることを望む。

 

仮想通貨モニタリングチーム来社

ある日、一通のメールが来た。

中身を読むと、なんと、仮想通貨モニタリングチームがわざわざ来社するという内容であった。

これは何かあると思い、ガイドラインを読み直した。恐らく、実態調査だろうと考えた。

そこで、オフィスを見渡してみると、パーテーションや金庫などなど、オフィスの設備として足りない部分が数多くあった。そこで、モニタリングチームの来社前にオフィスを整備し、必要なものは購入し、設置することにした。

次にやならければいけないのは、問答集の作成だった。

何を質問されるか分からないが、恐らく管理体制や設備について質問されるのだろうと考え、想定される質問を洗い出し、回答を用意した。

例えば、「仮想通貨の出金作業のフローは実際にどの場所で誰がどのような操作をするのか」や「個人情報の管理方法はどこでどのように管理するのか」など、考えられる質問を洗い出し、回答を用意した。

そしてとうとうその日が来た。

あらかじめ準備できることは全て行ったので、怖いモノは何もない。なんでも来い!

先方は数名で来社したが、まさかの面談であった。

オフィスや設備ではなく、一人一人の経歴や背景・これまで何をやってきたのかをざっくばらんにヒアリングし始めたのだ。

これには少し驚いた。ほぼ雑談状況が2時間ほど続き、最終的には

「では、今後も登録業務は質問票でやり取りさせて頂きますので!」で終わった。

メンバー全員、何しに来たのだろうか?と頭の中に?がたくさん浮かんだが、ひとまず無事に終わって何よりであった。

金融庁登録完了の日

ある日、会社に一通の電話が来た。

「〇月〇日に湯島に来てください。狭いので2名でお願いします。」

これにはみんな何だ?と思ったが、ひょっとして登録出来たのではないか?と頭の中によぎった。

確かに、最近は質問票も来ないし、そろそろ登録の話が来るかな?とも思っていた時期ではあった。

当日、湯島には別のメンバーが行ったが、いてもたってもいられず、関東財務局の近くの喫茶店で待っていることにした。

メンバーが戻ってくると、顔が笑っている!

まさに、金融庁登録が完了した日であった。

みんなで握手を交わし、ここからが本番だと言い聞かせたが、その日一日は、喜びを分かち合おうと関係者を集め飲みに行った。

この日のビールは格段に美味かった。五臓六腑にしみわたるほどだ。

登録時期等の詳細は省くが、一般的な標準処理期間は3か月と言われている。準備等を含めると倍以上の時間を要したことは確かである。

現在、登録申請の行列に並んでいる業者はそれ以上に時間を要しており、いつでも開業できる準備はできているのに登録申請が通らないためコストだけが毎月無駄に流れてしまっている。
彼らがこの1年で流したコストはどれくらいだろうか。開発費用、人件費、地代家賃…恐らく10億円ぐらいは掛かっているのではないか。

開業後にそのコストを回収できる企業は何社いるのか。そういった意味でも早く登録業者が増えることを望む。

2018年に入ってから一社も登録が出来ていない現状からは考えられないが、行列に並んでいる業者にもこの喜びを是非体験して頂きたい。

ちなみに公式な公表は別日なので間違ってもフェイスブックやツイッター等のSNSで「登録通りました!」なんてことは辞めましょう。

登録後の話-コインチェック事件の影響

登録後、まずは気を引き締めるためタスクを洗い出す。そして、優先順位をつける。事業計画を練り直す。予算計画を立てる。そしてシステム開発も進める。

登録前と後では色々と異なる。大手企業から出資の話が山ほど来た。色々な企業と相談した。

そうこうしているうちに、2018年1月に大事件が起こる。

いわゆるコインチェック事件だ。

保有していたNEMのほとんど、総額500億円以上の大規模ハッキング被害を受けてしまった。この事件をきっかけに金融庁は登録業務を一時ペンディングし、今に続いている。

コインチェック事件、他の登録業者からすると管理体制は非常にヒドイものだったと思う。外部の人間なので、外側で得られた情報だけで判断することになるが、顧客預かり資産のほとんど全てをインターネットに接続されたホットウォレットで管理するというのは、有り得ない話である。

ウォレットの利便性とセキュリティは反比例の関係にある。

利便性を重視すればセキュリティは甘くなるし、セキュリティを重視すれば利便性は失われてしまう。

しかし、取引所に入っている仮想通貨を誰が外部に出金するのだろうか。抱えているユーザー数のうち何パーセントなのか、算出できたはずである。算出できるのであれば、どれぐらいホットウォレットに入れておけば利便性は失われずに、また被害を最小限に抑えることができるかは容易に判断することができたはずである。

これを怠ったコインチェックの責任は重大である。

この点については、その当時の管理体制で言うと、具体的な基準はなく、企業によってまちまちであった。完全にコールドウォレットに入れて保管し、出金申請があった際に都度ホットに入れ替えて出金する業者もあれば、一日一回だけ出金する業者、そしてホットの割合を最小限に抑えつつ、基本的にはコールドウォレットで保管する業者と様々ある。

いずれにせよ、ほぼすべての仮想通貨をホットウォレットで管理するなど有り得ない話であるし、そんな管理体制で金融庁登録が出来るはずがないし、恐らく事件が起きる前に確実に指摘されていた事項だと思われる。

登録申請時に分別管理に関しては必ず聞かれる事項であるから、コインチェックはその場しのぎで事実は異なることを言ったのではなかろうかと疑われてもおかしくない。

この事件でハッキング被害の規模の大きさには驚いたが、それ以上に驚いたことがある。

コインチェックが返金出来たことである。

総額400億円近い金額を何と返したのである。今の世の中、400億円ものキャッシュを持っている企業が国内にどれだけあるのだろうか。これには非常に驚いた。

返せば良いという問題ではないが、返さないより返した方が良い、そのまま潰れてしまう業者も世界には数多くいるが、コインチェックはつぶれずに今も金融庁登録に向けて動いている。これはコインチェックのサービス形態、そしてUI/UXがそうさせたと思う。

コインチェックでは他の取引所では扱っていない仮想通貨を数多く取り扱っており、取引所よりも販売所メインである。

自社でポジションを抱えるリスクと引き換えに上手くスプレッドを乗せて販売することに成功していた。

話を戻すと、この事件をきっかけに一気に金融庁の登録が難しくなってしまった。お陰で登録業者のバリューは上がったが、業界全体からしたらマイナス要因である。

既存業者の資金調達は容易になった気がする。2018年に行われた仮想通貨交換業者への出資は全て数十億円規模の大型案件だ。

しかし、掛かるコストも一気に上がってしまったのは事実である。

まずシステム面では厳しい管理体制を敷かなければならなくなった。その分、人件費も掛かってしまう。そして監査法人はどこも引き受けたがらないので金を積むしかない。そして顧問弁護士も高い高いフィーを取る。

したがって、一番得をしたのは弁護士、監査法人、開発会社なのではなかろうか。

取引所ビジネスの中の人たちは所詮手数料ビジネスであり、それ以外にマネタイズポイントを見出せていない。

今マネタイズ出来ている企業がいるのであろうか。Zaifが60億円のハッキングでコインチェックのように返金出来なかった事実を見れば一目瞭然である。

儲かっていないのだ。

取引所ビジネスで儲かるのはもう昔の話。リスクを取って超マイナーコインを数多く取り揃えるか、超充実した注文が出来るなど、極端な差別化を図らなければ一業者として埋もれてしまう。

埋もれてしまうと、新規参入は難しく、既存の大手業者からユーザーを剥がすことが出来ない。しかし、取り扱い通貨には制限があるし、AIを駆使したトレーディングなど投資顧問だと指摘されかねない。

結局、どの業者も同じようなサービスになってしまうのではなかろうか。そう考えたら、別に筆者自身が取引所ビジネスにいる意味もなく、「ここで立ち止まっているよりは、もっとど真ん中の仮想通貨そのものを作ってやろう!」そう考えて辞めることにした。

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