仮想通貨活用のイベント、意図や展望は|近大・森山准教授に聞く

近畿大学のオープンキャンパスで、学内に仕掛けられた謎を解くことで仮想通貨を獲得できるイベント「暗号だらけの仮想通貨パニック」が開催されました。7月22日、8月25日、同26日、9月23日と開催され、 3600人以上の参加者が仮想通貨獲得に向け学内をめぐりました。

ChainAge編集部では、イベントを実際に体験するとともに、システム開発などを担当した同大の森山真光准教授にインタビュー。イベントの狙いや、今後の展望などについて聞いてきました!

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仮想通貨の“実際”を体験

――「暗号だらけの仮想通貨パニック」を開催したきっかけを教えてください。

近畿大学のオープンキャンパスにいらっしゃる方々に、大学内を存分に見て回っていただき、大学の魅力を感じてほしいという大学側の希望があったことが始まりです。その後、「謎解き」を通してこれを実現しようという企画が持ち上がりました。同時に、世間では仮想通貨が注目を集めていましたので、私の研究室に「謎解き×仮想通貨でイベントをできないか」という声がかかりました。

――普段はどういったことを研究されているのでしょうか。

企業間の電子商取引が研究室のテーマです。その一環として、仮想通貨を活用した企業間決済についても研究を進めています。具体的には、ビットコインやイーサリアムのブロックチェーンを動かして、性能評価、問題点の考察などを行っています。実は今回のイベントのシステムにも、イーサリアムのブロックチェーンが使われているんですよ。

イベントで使用されたイーサリアムのブロックチェーンのサーバー

――そうなのですね。謎解きのシステムも、もう少し単純なものかと思いましたが、かなり作り込まれていて驚きました。

当初は、ブロックチェーンのネットワークを研究室で構築して、参加者が謎を解いたら仮想通貨の出入金ができる「ウォレット」を作るという想定でした。謎解き自体は、紙に書かれたものを解いてもらうつもりだったんですよ。しかし、謎解きのシステムも、それに関わる仮想通貨の管理も、すべてネット上で完結できるようにすればより面白いのではということになり、ウェブアプリケーションも開発するに至りました。

――大変な労力だったと思います。

そうですね。私自身、電子商取引の研究以外にも、学部でウェブアプリ開発に関する授業を
持っていますし、今回は研究室の学生にも手伝ってもらいました。学部生が9人で、大学院生が1名です。また、ストーリー構成などの企画・デザインは株式会社人間さん、謎解きの仕掛けはクロネコキューブさんに協力をお願いしました。謎解きでは、チュートリアルが組まれたり、仮想通貨を使ってヒントを購入できる仕組みなど、かなり充実した内容になったと思います。

――システム開発から参加者まで、仮想通貨というカテゴリーに「学生」を巻き込んだイベントになっていると感じました。

高校生を含めた一般の学生たちに、獲得した仮想通貨が何らかの実物に交換できるところまでを体験してもらい、仮想通貨による決済を肌感覚として知っておいてほしいという気持ちはありました。
本来は、イーサリアムのパブリックチェーンにシステムをつなぎ、秘密鍵も参加者自身に管理してもらい、実際の仮想通貨決済に近いモデルを体験してもらおうと思っていました。ただ、それだと手数料が発生するなどイベント運営に不便なところもあるだろうということで、今回はプライベートチェーンでの運用となりました。秘密鍵も、研究室が一括で管理しています。
また、研究室の学生について言えば、イベントのシステム開発を通じて、実際に学内外の方々と実際に「仕事」をすることができました。これはとてもいい経験になったと思います。

学生主体で「謎解き×仮想通貨」のビジネスプランも

システムの説明をする研究室の学生(左から2人目)

――イベントに関する反省点はありますか。

まず、イベントのシステムに組み込んだブロックチェーンのネットワークについては、大きなエラーもなく運用することができました。
むしろ、エラーが多かったのは、ウェブアプリのほうですね。当日は、多くの参加者が、さまざまなデバイスとブラウザで参加されましたので、ブラウザが固まってしまったり、デバイスの「戻る」ボタンで前画面に戻った場合に、正しい記録が表示されなかったり…と、イベント初日は、数分に1回のペースでエラーが発生していました。
また、QRコードを読み込んでIDを発行する際、受付のオペレーションがスムーズにいかない場面があり、長蛇の列ができてしまったということもありました。

――「謎解き×仮想通貨」の組み合わせは、地域おこしなどにも活用できそうな気がします。今後はどのような展開を考えているのでしょうか。

実は、今年のキャンパスベンチャーグランプリ(大学生などを対象としたビジネスプランコンテスト)に、今回の「謎解き×仮想通貨」を活用したビジネスモデルを応募してみようかという話になっています。今回のイベントを通じて、開発・運用にかかるコストや改善点など、さまざまなノウハウを蓄積できた部分はあるので、うまくパッケージ化できればと思っています。

日本からエンジニア排出を

 

――認知度は高まってきているとはいえ、仮想通貨業界には、まだ不透明な部分も多いと思います。今後はどのように発展していくと考えますか?

研究室としては、企業間の商取引に仮想通貨を利用し、より円滑な商取引を実現することが大きな目標です。それの流れは、大企業もさることながら、中小企業にも波及していってほしいと思っています。
例えば海外と貿易のやり取りをするとき、多くの企業はL/C(信用状)決済という形で、銀行を介して取引をします。いわば、銀行が代金の支払いを保証するわけですが、これは企業にある程度の「体力」が無いと利用することができません。小さな企業でも、面白い製品を開発していて、海外と取引したいということはあると思います。特に東大阪市は、そのような企業さんはたくさんあるのですが、契約の直前で決済方法をどうするかが大きな課題となってきました。
ここに、仮想通貨をうまく活用し、小さな企業でも円滑に海外送金できる仕組みをつくりたいと考えています。そして、企業間で仮想通貨取引が活発になれば、技術は洗練されていき、個人レベルでも安全に使用できるようになっていくと考えています。

――仮想通貨が本格的に使われ始めれば、経済に大きな影響を与えそうです。

そうですね。そのために、個人的な希望としては、日本国内から多くのブロックチェーンエンジニアを排出していきたいと思っています。この分野に携わる大学教員もまだ少なく、学生の意識もそこまで高くない現状ではありますが、今回のようなイベントを通じて様々な情報を提供するとともに、より円滑な経済活動のために研究を続けていきたいと思っています。


いかがでしたでしょうか?仮想通貨を組み込んだイベントの意図から、業界の今後に至るまで、貴重なお話を伺うことができました。取材に協力していただいた森山教授、大学関係者の方々、大変にありがとうございました!

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